なんなんだ、とプロイセンは思う。
時折隣からの視線を感じ、どうにもそわそわと落ち着かない。
言いたいことでもあるのだろうかと様子を窺ってみてはいる。
けれども目と目が合った瞬間、視線を逸らされてしまうのだ。
やや俯いた視線の先には、きゅうと握られた拳がある。
切り揃えられた黒髪の隙、覗いた耳が仄かに赤い。
まさか、と過ぎった可能性。
によによと顔がにやけてしまう。
跳ねる心臓を落ち着かせ、どうした? と問いを投げ掛けた。
途端に日本は身を震わせて、真っ黒な目を丸くする。
えっ、あの、その、と口篭り、あちこちへ視線を泳がせて。
「……あの、」
「なんだ?」
期待に胸を膨らませ、先を促す言葉を返す。
小さな口を開けたり閉じたり、そんな仕草が愛らしい。
そう思ったことに驚いて、によ、と更に顔がにやけた。
意を決したらしく顔を上げ、日本が真っ直ぐ視線を向ける。
淡く染まった頬だとか、潤んで見えるその眸だとか。
普段なら気になどしないのに、それだけで心臓が跳ねるよう。
「あの、とても可愛らしいですね」
「……なっ」
はにかむような笑顔で告げられ、咄嗟に言葉が返せない。
ばくばくと煩い心臓と、ぐるぐる渦巻き乱れた思考。
故に日本の視線の行く先、何があるのか気付けない。
内心で焦るプロイセンを尻目に黄色い小鳥が欠伸をひとつ。
銀色の頭にちょこんと座り、黒目がちな目をとろんとさせて。
それを見詰める日本の顔は甘く柔らかく微笑んでいた。
すべてはプーの勘違い!
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