ちりん、と小さな音がして、フランスはおやと目を見開いた。
軒下に吊された丸いガラスが、ちりんちりんと鳴いている。
風が吹く度にひらひらと、ガラスの下にくっついている縦に長い紙が揺れた。

「なあ日本。あれ、何?」

あれ、と指で示された物を見、日本は黒い目をすうと細める。
いとおしむような慈しむような、とても柔らかな表情をして。

「ああ、あれは風鈴ですよ」
「フーリン?」

耳慣れぬ言葉を鸚鵡返しに、フーリンて何? とフランスは問う。
相手の手を取り、手のひらを上に、つい、と日本は指を滑らせた。

風の鈴、と書くのですよ。
ほら、ああして風が吹くと鈴のような音で鳴るでしょう?
耳からも涼を取り入れようと軒先に吊すものなんです。

その説明の合間にも、ちりんちりんと軽やかに。
青い両目を柔らかく細め、きれいな音だ、とフランスは言った。

「グラスを合わせる音みたいだな」

日本は一瞬目を見開いて、すぐに小さく肩を揺らした。
フランスさんらしい発想ですね、とくすくす笑いを零しながら。
ちりん、と風がグラスを傾け涼やかな乾杯の音を告げた。





今夜は頂いたワインを開けましょうか。
肴は何が良いでしょうね……?





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