「あれ」

いやに静かだと思ったら緑色の目は瞼の下に。
緩く組んだ腕を枕にテーブルの腕に突っ伏している。
呼吸に合わせて上下する背中と、すう、と繰り返される寝息。
開け放した窓から吹き込む風が柔らかな金髪をふわりと揺らした。

「紅茶、淹れてくれるんじゃなかったっけ?」

お兄さん、楽しみにしてたんですけど。

苦く笑みながらそう囁いても相手は夢に沈んだまま。
んん、と小さく呻いただけで、目を覚ますには至らない。

眠っているのをいいことに軽い悪戯を繰り返す。
相手の頬をつついたり、髪をくるりと指に絡めたり。
起きていたなら殴られるだろうと思うことばかりを繰り返し。

こうして眠ってる時ならば静かで大人しい良い子なのにねぇ。
口を開けば罵声が飛び出る似非紳士様とは大違いだ。
けれど、反応がないのは詰まらない。
寝顔は素晴らしく可愛らしいのだけれど。

持ってきた菓子を持て余しつつ、仕方がないかと肩を竦める。
紅茶は自分で淹れるとしよう。
自慢の菓子と相手の寝顔で、素敵なティータイムとしようじゃないか。





ああ、やっと起きたかい? 坊ちゃん。





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