結ぶ実のない私の身体にどうして欲など覚えましょう。
組み敷かれながら投げた問いには眉間の皺と怪訝な声。
淡く弱い月明かりの下、金色の髪が鈍く光る。
「難しい言葉は解らないよ」
言うが早いか顔を寄せ、仰け反る喉元に口吻けてきた。
びくりと跳ねる身体と呼気と、途切れ途切れの高い声。
鼻先が触れるほどの近さで彼は私の目を射抜く。
瞼を下ろすことはおろか、目を逸らすことさえ出来はしない。
「君は子供が欲しいってだけで、身体を繋げたりするのかい?」
違うだろう? と問うその声は鼓膜と思考を上滑る。
解らないと言った癖に。
内心でそう思いながらも言葉を吐き出す暇はなく。
熱に浮かされ喘ぐ最中、眦から流れた涙の雫を彼の舌が舐め取った。
咄嗟に固く目を閉じて、僅かな声も漏らすまいと強く唇を噛み締める。
駄目じゃないかと零れた声音と唇をなぞる彼の指。
頬に触れるその手は優しく、落とされる口吻けは柔く、甘い。
「俺が君を抱くのはね、菊。君のことが好きだからだよ」
真名を呼ばれて見開いた目に、相手の鮮やかな青が映る。
眼鏡を外したその双眸は、いつになく真剣な色をしていて。
好きなんだよと繰り返しては、頬に額にと口吻けられた。
「菊、菊、ねえ、好きだよ」
何度も何度も呼ばれる名前に答える余裕は欠片もなく。
ただただ力の入らぬ腕で、広い背中に縋り付いた。
結ぶ実のない花は咲き、散り落ちる夢に怯えるばかり。
あいしていると囁かれても、どうして信じられましょう。
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