つらつらと英字が流れゆく様に、ほう、と小さく息を吐く。
ちらりと視線を隣へ投げると期待に満ちた青とかち合った。

きらきらと目を輝かせ、弾んだ声で私を呼ぶ。
なんでしょうかと言葉を返すと、ずい、と距離を詰めてきた。

「どうだい! 面白かっただろう?」

端から否やの返事など聞く気はないらしい声が鼓膜をびりびりと震わせる。
にこにこと、きらきらと。鬱陶しいほどの笑みを湛えて。





「アメリカさんらしい作品でしたね」

迫力のある映像ばかりで圧倒されてしまいましたよ。
さすがですね、アメリカさん。

上っ面だけの笑顔で言えば、そうだろう! と満足げに笑む。
それは君にあげるよ。
なんたって君に見せるために持って来たんだからね!

そう言って緑茶をぐいと飲み干し、じゃあねと縁側から出て行った。
毎回毎回、玄関から出入りするようにと言っているのに。
何度言っても右から左、聞く耳持たずの姿勢にも慣れた。





嵐のようだと思いつつ、はあ、と深い溜息を吐く。
年若い国が残していった彼の映像を、二度と見ることはないだろう。
確かに圧倒されはした、けれど、それだけでしかない。

「ヒトばかりが勝利するだなんて、詰まらないでしょうに……」

伏せた瞼の裏側には、暗い画面が次々浮かんだ。
過去の過ちにより生まれた災厄。炎に包まれ蹂躙される町。
生活を、命を、奪われた人々。
世界を傾ける危機を孕んだ兵器を巡る人間ドラマ。

思い出すだけでも背筋がざわりと粟立つようで。





す、と両の目を開けて、懐かしい記憶の中をたゆたう。
速ければ良いという訳ではないのだ。
恐ろしげであれば良い訳でもないのだ。
数に物を言わせるなど以ての外。

それに、と眉間に皺を寄せ、苛立ち紛れに溜息ひとつ。

彼は卵を産みはしないし、鮪を好んで食しもしない。
あんなにちょこまかと逃げ回ることもなく、威風堂々としているのに。
まったく、何てことをしてくれたのだろう。
力ばかりが強大な、あの国らしいとは思うけれど。

君のとこの作品をアレンジしてみたんだよ、と自信ありげな声が脳裏に響く。
追い払うように首を振り、裾を捌いて立ち上がった。
手早く外出の支度を済ませ、草履を足に突っかける。





久し振りに、彼に会いたくなってしまった。





彼=ゴジ●さん





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